比類なき幻想世界、そこに脈打つ生命達の息吹。眩き5編に溢れる第9巻、ついに現出。
●残り紅
昼でも夜でもない、不確かな刻――夕暮れ。地に長く延びたふたつの人影が重なる時、永く眠っていた闇が目を醒ます。
●風巻立つ
凪の海で帆を揺らす船。意のままに“蟲”を操り風を呼ぶ危うき少年は、己が為に往く――心に地平を見る為に。
●壷天の星
輝きひとつ見えぬ夜空、しかし頭上にのみ散らばる幾多の星。独り、少女は見上げていた――異質な闇と懐かしき光を。
●水碧む
水に呼ばれ、自らも水を欲し――かの者は、求め続ける。胎内での記憶に呼ばれたかのように、しかし彷徨うように。
●草の茵
それは何処であったか、何時であったか。白き髪と緑の目を持つ少年は、世と生命の“理”を――そして己が居るべき処を照らす光を知った。