目が覚めると新世界にいた。巨木の中で眠っていた紫郎は、目の前にいた空色の髪の少女から前時代の生き残りであることを知らされる。そこは波動係数収束管理システム、通称世界樹(ユグドラ)によって支配された未来だった。人間のほかに、それに従属するために生まれた生体型人造人間(バイオロイド)もいた。困惑しながらも常識の通じない世界を理解し、順応していこうとする紫郎。その生活は緩やかで安寧で眠る前の記憶もまた、退屈な毎日の中で過去のものとなっていく。その矛盾に気づかぬままに―。「薬屋のひとりごと」の日向夏の待望の新作は近未来ファンタジー。理想と現実、そして己の存在価値が炙りだされていく。