セックスをテーマにした物語で、それ故この作品は、1970年に神奈川県で有害図書に指定されている。作者自身が語っているように、本作は学園紛争時代の暗く殺伐とした世相を反映した、暗い作品になっている。
この作品では、母親から虐待を受けた主人公が精神科で治療を受ける合間に見た夢がオムニバス形式で描かれるが、それと同時に主人公自身の物語も次第に進行していく。冒頭付近に予告されているように、いずれの夢も「女性を愛するが、結ばれる前に自分か相手が死んでしまう」という、悲劇色がきわめて強いものである。オムニバス形式を取りつつ、個々のエピソードの積み重ねにより、ひとつの大きな物語の流れが形作られながら進行していくという手法は、後に『鳥人大系』でも用いられた。