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2001年までに、日本は中国に対して総額3兆円にのぼる巨額の経済援助を行ってきたにもかかわらず、中国国民に認知も感謝もされず、また、「友好」施設は日本側の本来の意図とは異なる目的で使われるなど、「国民の血税」がわけのわからぬ使われ方をしている――。本書は、対中援助をはじめとする日本のODA外交に、こうした鋭い疑問を突きつける。

援助事業の現場を歩くなど5年にわたってODAを考察してきた著者は、「ODAの創始国」アメリカには、自国民の利益につながる一貫したODA戦略と、その目的や成果を問う活発な言論状況があることを紹介する。翻って、日本のODAには一貫した理念や政策も、実施を規定する法律もないこと、また、複雑な予算メカニズムや少ない無償援助といった特異さがあることを指摘する。さらに、中国、ベトナム、ケニアなどの援助事業を検証して「疑惑と矛盾」を訴え、最終的に「対中ODAゼロ・ベース予算」を柱にした、みずからのODA見直し案を提唱する。

外国のODA戦略との比較、日本が「ODA超大国」になるまでの歩みの検証、ODAをめぐる賛否両論の整理、援助の現場の実態報告…という、著者の多角的なアプローチによるODA批判は説得力がある。そしてなにより、援助が大都市のインフラ整備に集中している、資金をめぐる公金横領疑惑がある、といった実態の指摘には驚かされてしまう。

財政難からODA予算も縮小の一途にあるが、予算規模の問題だけでなく、日本の外交理念のあり方など、より根本的な問題について考えさせられる。(棚上 勉)

投稿日
発売日
ページ数
76
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