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本書は、備中兵乱とその中心人物であった戦国武将、三村元親の実像に、一次史料をもって迫ろうというものである。備中兵乱は、天正二年(一五七四年)から翌三年にかけて備中国で起きた、三村元親らと、毛利氏(中心となったのは毛利輝元及び小早川隆景)及び宇喜多直家らとの戦いである。一般的には、備中兵乱は、織田信長に勧誘された三村元親が、長く協力関係にあった毛利氏を裏切り、謀反を起こしたため、毛利氏に亡ぼされた戦いであるとされている。確かにそうした面はないではない。しかし、一次史料をよく読むと、それ以外の側面が浮かび上がってくる。それは、端的にいえば、三村元親が毛利氏を裏切ったというより、むしろ毛利氏が元親を裏切った、あるいは見捨てたのではないかということである。備中兵乱は、いわばリストラされた中間管理職の反乱だったのではないか―本書はこの仮説を、一次史料を使って検証していく。鍵となるのは、「水」と「鉄」。

補遺として、2014年のNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』の主人公、黒田官兵衛孝高と備中兵乱との関係を収録した。官兵衛は、三村元親とほぼ同世代と思われ、同じ時代を隣接した地域で過ごしている。両者の間の直接的な関係はあまりないが、元親と一時は戦い、一時は同盟するなど深い関係にあり、備中兵乱にも大きな影響を及ぼした浦上氏は、黒田氏とは密接な関係にあった。戦国の世を生き抜き大名として江戸時代まで家を残した官兵衛と、天正初年に滅びた元親らとの違いはどこにあったのかを考察する。


戦国の六等星――備中兵乱と三村元親の実像 目次

前書きに代えて

第一章  備中兵乱とその時代
 第一節 備中兵乱とは
  備中兵乱の概略/備中兵乱の経過/「忠」と「孝」と諸行無常
 第二節 一次史料と二次史料
  一次史料と軍記/軍記の「意図」/本書のアプローチ
 第三節 備中兵乱の背景
  「戦国」という時代/鉄と鉄砲/毛利氏と鉄砲/三村氏は鉄砲を作っていたのではないか/産業の集積地としての松山/水陸交通の要衝/海賊と水軍/水軍としての海賊/「鉄」と「水」のつながり/海賊たちの転機
  
第二章 三村元親とはどんな人物だったのか
 第一節 軍記から見る三村元親
  三村氏/軍記による元親像/文学作品における元親像
 第二節 先行研究から見る三村元親

第三章 史料からみる三村氏
 第一節 三村家親
  戦国大名への道/毛利氏との協力関係/浦上宗景/三浦貞広/毛利隆元と荘元祐
 第二節 三村元親
  由佐氏/穂井田元清/毛利氏/三村親成/壬生朝芳/尼子氏、大友氏

第四章 史料からみる備中兵乱
 第一節 天正元年
  天候不順/足利義昭をめぐる交渉/なぜ朱印状を出したのか/「水」と「鉄」を押さえる/なぜ朱印状は宗景に出されたのか/権力の確立をめざす直家/毛利氏の方針
 第二節 天正二年
  直家の「謀反」/織田信長軍勢催促状/信長の意図/なぜ軍記はウソを書いたのか/本当に元親は謀反したのか?/不自然な毛利側の動き
 第三節 天正三年
  時代の転機/連携への模索/備中兵乱の「黒幕」は大友氏なのか?/浦上氏の動き/元親はどう動いたのか/三村氏の滅亡/毛利氏にとっての三村氏/毛利氏にとっての備中国/「宴」の後/備中兵乱とは何だったのか

終章  戦国の六等星

補遺  『軍師官兵衛』と三村元親――何が「彼ら」を分けたのか
 第一節 官兵衛と三村・浦上
  大河ドラマ『軍師官兵衛』/官兵衛と元親/官兵衛と浦上氏
 第二節 彼らが直面していたもの
 第三節 官兵衛と三村・浦上を分けたもの
  天正三年の「先見性」/元親はなせ生き延びられなかったのか

あとがき

参考文献

備中兵乱関連年表

投稿日
発売日
ページ数
114
投稿者
ゲスト投稿

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