シナリオは映像コンテンツ制作の仕様書であり映像コンテンツの発展とともに進化してきた。しかしそれは世界レベルでの話であって、日本ではこの60年ほど殆ど進化がないままディジタル時代に入ってしまった。これは多分に日本語という障壁によるものであるが、大きく変化しつつある諸外国と比較するとその差は広がるばかりである。日本ではシナリオは文芸作品として扱われることもあるが、あくまでも映像化のための中間成果物であり、映像コンテンツ制作に関わるすべてのスタッフやキャストが同じ解釈のもとに、それぞれの専門表現を行うための指標となる文書だ。
大きく失敗しないシナリオライティングメソッドの研究は、ハリウッドのメジャースタジオで1960年代から始まったが当初は企業秘密とされ門外不出の技術であった。ところが1985年にはそれがオープンになりハリウッドの映画は世界の市場を席巻するようになった。そのメソッドは最近になって日本でも翻訳書を読めるようになったが、ここには大きな落とし穴がある。アメリカをはじめとする英語を公用語とする国々の社会や習慣、教育方法は日本のそれとは異なるからだ。また事象に対する反応や価値観も異なるところがあり、それを前提として書かれた教則本では説明不足の点が多いのだ。
本書では、そのような社会や習慣の違いに配慮するとともに、シナリオの内容を筋書(プロット)と描写(レンダリング)の2つの機能に分解し、それぞれを簡単で短い文章から、徐々に資料を増やし内容をふくらませてゆきながら完成に向かうというバイステップ法を紹介している。また映像コンテンツを世界に通用する価値を持つものにするためのフェイズ構成やリマインダー設定など、ハリウッドの教則本にはない共通則を抽出しその利用方法も解説している。
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