「悪いことをすると、心が軽くなる気がするの」「悪い子になっていいよ。私を愛してくれるなら」――男はいくつになっても、女からの愛を諦めきれない。その相手が自分をあの世に誘う女であっても。谷崎、川端の世界につらなる、老いらくの恋の彼方へ。
連載時に挿絵でコンビを組んだ、ヤマザキマリさんのイラストが表紙を飾っています。
――作品中にちりばめられた名言集
・同じコトバを投げかけても、モテる男は口説きになるが、モテない男はセクハラになる。モテる男に触られれば、愛撫になるが、モテない男は微笑んだだけでセクハラになる。
・やっと見つけたんだよ、三人目の女を。たぶん、これが最後の恋になる。
・この緩やかな三角関係はほのぼのと居心地がいい。
・自分の彼女を父親に譲るのが親孝行ですか?
・五十五歳にもなれば、かなり悟っているだろうと若い頃は思った。何事にも寛容で、恨みつらみを貯めず、見栄を張ったり、意固地になったりせず、もう若い女に目移りするようなこともないとてっきり思っていたが、それは大きな間違いで、ともすれば若い頃より分別がなく、執着心が強くなっている。
・礼儀正しくて、年配者受けのする性格のいい子なんて、大抵の場合、メッキだよ。私はメッキに惚れたわけじゃない。心に闇を抱えているから、好きになったんだ。
・やはり、オヤジは懐も深ければ、欲も深い。自己中の困ったチャンに嬉々として振り回されたいとは。
・愛する女の目の前でする土下座は思ったより心地よいものだった。