『これで読破!徒然草』をお届けします。兼好法師の柔軟な考え方や好奇心、価値観の多様性にきっとびっくりすることでしょう。そうして、いつの時代でも人の考えることはあまり変わらないのだな、と安心したり、面白がったりできるかもしれません。鎌倉時代の「世間」と、現代の「世間」とは、隔絶したものではない事に気が付くと、少し広い視野で、物が見えてくるかもしれません。
翻訳は、物語として読んで分かりやすいように、言葉の順序などは入れ変えてありますが、語句の解説を丁寧にしてありますから、興味のある段は、一つ一つの言葉に拘りながら、じっくり原文と見比べてみてください。それぞれの解説は、私が大学時代に聞いた安良岡康作先生の講義を取り入れたところも多いのですが、あれから四十年。時間が経つ間に、ああではないか、こうではなかったかと、自分なりに考えたことや感想を付け加えています。さらに読者が独自の感想や解釈を持つことができれば、兼好もさぞ、満足に思うだろうという気がします。作者が驚くような感想を読者が持つ、それが読書の醍醐味の一つです。
『これで読破!徒然草』は、三石由起子の「これで読破!」シリーズの一冊ですが、ある人はこれを、人生相談の教科書として読んだと言っていました。兼好が読者のお悩みに的確な答えを出してくれるかもしれません。どうぞ、ゆっくりとお楽しみください。