丹羽前大使を「親中派」と決めつけてはいけない。氏の中国論はきわめて誠実でまっとうである。
―――――――――――――――――――社会学者、『おどろきの中国』著者 橋爪大三郎
世界一の貿易額、世界第2位のGDPをかさに着て、中国が驕りを見せはじめた。その態度は、もはや日本なしでもやっていけると言わんばかりである。
経済的に勢いづいているのは確かだが、その内実は数々の難問に直面している。拡大する都市と農村の経済格差、国有企業の杜撰な経営体質、テロや暴動が絶えない少数民族問題、要人たちの汚職と不正蓄財……。
そうした中国国内の真実は、報道を通じて知られているようでいて、意外と情報は流れていない。感情論だけが先走り、隣国を正しく見据えられていないのではないか。
この状況に危機感をもった前中国大使が、ついに沈黙を破る。退任後、氏が大使として2年半にわたりつきあってきた中国について、ここまでくわしく語ったのは本書がはじめてである。政治的基盤がまだ不安定な習近平政権の現実と未来、ロシアと連携を深める彼らのねらい、相次ぐウイグル族の爆弾テロの背景など、そのトピックは広範囲にわたる。