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 この物語は、平安時代の大勢の貴族たちの目を通して、当時の生活習慣、花鳥風月を楽しむことができる。現代人にも共通の恋愛と結婚、出産、別離、嫉妬などの様々な場面で、人の世の栄華と無常、そして何よりも人の世に生きることの喜びが描かれている。
 お受験のカリスマ・三石由起子が読み解くからこそ、高校の教科書のアンチョコ・虎の巻としても使えてしまう目から鱗の『源氏物語』。与謝野晶子、谷崎潤一郎の解釈は言葉が難しくて萎えます。瀬戸内源氏や円地源氏も、何だか女が湿っぽくて悲しくなる。常識として省かれる和歌の解説も丁寧です。
 さて、五十四帖からなる物語の第五十三帖は、「手習」である。浮舟は、身体の危機を脱し、記憶も戻って来た。つくづくと自分の過去を考えると、情けない人生だったと思われてならない。物の価値も判断できず、教養も足りず、人生を誤った自分であった。浮舟は出家を決意する。色恋を離れて、自分の心に向き合わねばならなかった。一方、薫君は、浮舟の生存を知る。驚き呆れるが、真相を確かめずにはいられなかった。あの可愛い、頼りない浮舟が、自殺を決心し、その後出家をしたというのである。匂宮が執着を見せる女のことなど忘れなければならなかったが、その前に真相を知りたいのである。自分より早く、仏の道に入った浮舟の姿は、どんなであろうか。見苦しいものか。神々しいものか。
 いつの時代にも、人の想いはさまざまである。さあ、カオスなエロスの世界にようこそ。

投稿日
発売日
ページ数
57
投稿者
ゲスト投稿

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